11.あの戦争はなにだったのか                   2005年10月記   

あの戦争は
何だったのか

保坂正康著
新潮新書

昭和16年(1945年)、真珠湾攻撃により開戦した太平洋戦争は、
昭和20年(1945年)に日本の無条件降伏により敗戦し終戦となった。

この戦争で310万人の人が亡くなったという。
(戦後の戦病死を含めると500万人とも)

今年は戦後60年の年である。

この本は、旧日本軍の構造から書き起こし、開戦にいたるまでの状況、
そして開戦から敗戦への過程が分かりやすく書かれている。

著者は、
『この戦争は、当時の状況からは始めなければならなかった。
しかし、もっと早く収めるべきであった』との立場で、軍部の責任を指摘されている。

この本で印象に残った、次の文章を引用させていただく。
『日本人は、アメリカ軍が来たら竹やりで刺し違えるなどといっていたのが、
一夜明けると、全てがリセットされてしまってアイ・ラブ・マッカサーに変わって
しまえるのだ。
こんな極端な国民の変身はきっと歴史上でも類がないだろう』

今、戦後60年にして、自衛隊、憲法改正、外交、靖国問題等の難しい課題に直面している。

今日、第3次小泉内閣が発足した。

  12.戦争を知らない人のための靖国問題              2006年4月記


上坂冬子著

文春新書

文芸春秋社
発行

最近、我国と中国や韓国との関係で、靖国問題が騒がしい。

著者は1930年(昭和5年)生まれで、戦時中、軍需工場に
学徒動員されたこともあるノンフィクション作家である。

すでに戦中派の我々の年代も含めて、戦争を知らない世代が、80%を
占める時代となっているという。

『戦中と占領下の苦難を知らずして、靖国参拝の是非を軽々しく
判断できるのか?』との観点で靖国問題を解説し、論じている。

本書の最終章では、中華人民共和国の胡錦濤主席、
大韓民国の盧武鉉大統領宛ての声明書(著者の私案)が掲載されている。

著者の靖国神社参拝を肯定する論理は、戦争を知らない我々を
十分に納得させてくれる。


  13.昭和史入門                            2007年9月記

保坂正康著

文春新書

(株)文藝春秋

昭和64年(平成元年)1月7日、通勤途中の車のラジオニュースで、
昭和天皇の崩御を聞いた記憶がある。

あれから平成になって19年、昭和もだんだんと遠くなりつつあるが、
我々の生活基盤の前半は昭和であった。

この本では、昭和を三つの時代に分けて、昭和元年から終戦の昭和20年までを昭和前期、
講和条約が発効し日本が独立を回復する昭和27年までを昭和中期、
そして昭和天皇崩御の昭和64年までを昭和後期と分類されている。

そして、昭和前期を『軍事主導体制とその崩壊』の時代、
昭和中期を『再生日本と新生日本の対立』の時代、
そして昭和後期を『高度経済成長と経済大国となる』時代
と位置付けされている。

我々の年代の者が物心がついて、本当の記憶があるのは、昭和後期であり、
幸運な時代に生きてきたと思える。


  14.上杉謙信                            2005年11月記

上杉謙信
(全1巻)

吉川英治著


講談社出版

詩吟で詠われる『九月十三夜陣中の作』は戦国時代の武将、上杉謙信の作である。
越後の龍とも越後の虎とも言われ、そして詩をも作る上杉謙信とは
どんな人物であったのかと思ってこの本を手にとってみた。

宿命の対決、上杉謙信と武田信玄との川中島での合戦は、12年間に
5回にわたって繰り返されたという。
そのうちで有名なのが、第4回目の合戦(1561年)で、その戦いがこの本によって再現されている。

この戦いは、前半が上杉謙信の勝ち、後半が武田信玄の勝ちで、またしても
引き分けであったという。

この川中島の合戦を詠った詩、
頼山陽作
『不識庵機山を撃つの図に題す』を掲載しておく。

鞭聲粛粛夜過河
(べんせい しゅくしゅく よる かわをわたる)

暁見千兵擁大牙
(あかつきにみる せんぺいの たいがを ようするに)

遺恨十年磨一剣
(いこんじゅうねん いっけんをみがき)

流星光底逸長蛇
(りゅうせい こうてい ちょうだをいっす)

  15.超バカの壁                             2006年1月記

超バカの壁

養老孟司著

新潮新書

数年前に、養老孟司著の『バカの壁』がベストセラーとなった。

この『バカの壁』は読んでいないが、解剖学者である養老孟司氏には興味を
もっていたので、この本を買ってしまった。

この本の著者は言う。
『今の日本社会には、明らかに問題がある。どんな問題があるのか。私は、ものの考え方、
見方だと思っている。そこがなんだか、変なのである。』・・・と。

この本には、現代の社会問題である、『フリーター、ニート、テロとの戦い、
少子化、靖国参拝、心の傷』などについて、著者の見方と考え方が書かれている。

  16.死の壁                               2006年5月記


養老孟司著

新潮新書

新潮社
発行

かってベストセラーとなった『バカの壁』に続く、養老孟司氏の新潮新書第二弾である。

養老孟司氏の本は、『バカの壁』を読んでいないが、『新・バカの壁』に続いて、2冊目になる。

解剖学者であり、趣味は『虫の採集』という氏のパーソナリティに引かれて
読んでみたものである。

人間は一生に一度は確実に、しかも100%の確率で死ぬものである。
それにも係わらず、現代人は、あまりにも、『死』に恐怖を覚え、『死』を忌み嫌っている。

この本は、各種『死』のエピソードを紹介しながら、『死』に対する著者の考え方が書かれている。

  17.国家の品格                             2006年3月記


藤原正彦著

新潮新書


この本が今ベストセラーである。

著者は、数学者で、父が作家の新田次郎氏、母が作家の藤原てい氏である。

先日、日曜朝のテレビに出演され、なんとも大胆なことをいわれていたのに
興味を持って、この本を読んでみた。

著者は言う。

『現在の社会の荒廃を食い止めるために、今、日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、
民主主義よりも武士道精神であり、国家の品格を取り戻すことである』・・・と。

タイトルは難しそうであるが、話し言葉で書かれていて読みやすく、納得できる内容である。

  18.10年後の日本                          2006年6月記

『日本の論点』
編集部編

文春新書
文藝春秋社

文藝春秋社が発行する『日本の論点』の中から今後10年後の日本についての
論文を収録した本である。

今後10年後の日本は、消費税ニ桁化、団塊世代の大量定年、500万人のフリーター、
年金の崩壊、熟年離婚、格差社会の拡大・・・等など、あまり明るい話はない。

これらの中で一番心配するのは、国の財政赤字(国の借金)の増加である。
赤字の額はGDPの1.5倍で、先進国では類を見ない特出した数字であるという。

もしこの借金が今後も改善されずに、増加すれば、世界の信頼を失い、
猛烈なインフレと国家の破綻に至るという。

日本では、戦前の1932年、物価が350倍まで高騰し、ロシアでは1998年に、
物価が70倍まで跳ね上がり、2001年には、アルゼンチンでハイパーインフレが起こり、
貯金は消えて、お金は紙くず同然となった歴史がある。

   19.美しい国へ                             2006年10月記

安倍晋三著

文春新書

(株)文藝春秋
発行

この本は言わずと知れた、9月26日に第90代内閣総理大臣に就任された
安倍晋三氏(52歳)が、書かれたもので、総理大臣になる前の7月に発行された本である。

安倍氏は一般的には鷹派の政治家と呼ばれているが、本の中身は意外にソフトな語り口である。

しかし、まえがきで、「初当選して以来、わたしは、つねに『闘う政治家』でありたいと
願っている。」と書かれている様に、『国家』『ナショナリズム』『外交』『教育』などについては、
骨太である。

おじいさんの岸信介氏のように、生半可な世論やマスコミの声に迷うことなく、『闘う政治家』らしく
毅然たる態度で国家の運営を行ってもらいたいものである。

安倍晋三氏のプロフィールについては、フリーの百科事典ウィキペディア百科事典に詳しい。

  20.小沢主義                     2006年11月記

小沢一郎著


(株)集英社
発行

前回は内閣総理大臣 安倍晋三氏の『美しい国へ』であった。
今回はもう一方の将、民主党代表の小沢一郎氏の本である。

47歳で自民党幹事長に就任し、その後、新生党や新進党、自由党を結成しては
解体し、豪腕小沢とも、壊し屋小沢とも言われる人である。

本中で気に入った小沢イズムを上げておこう。

『大規模農家を優遇する農水省の愚』
『国民全体の意識改革を』
『リーダーなき国家は滅びる』
『リーダーに任せることの重要性』
『100ドル札をつきつけられた指揮官』
『国連に御親兵を』
『モラルの崩壊、動物の子育て、人間の子育て』


日本の政治も早く政権交代が可能な二大政党制になる事を望みたい。
(現在の民主党はまだまだか?)

小沢一郎氏についてはウィキペディア百科事典に詳しい。

  21.日本を創った12人                        2006年11月記

前編

堺屋太一著

PHP新書

PHP研究所
発行

堺屋太一氏が今から10年程前の1995年に書かれた本である。

日本と日本人の特徴や日本社会の特色を考える場合、日本と日本人の心となり肉となってきた
歴史の流れを知る事が重要である。・・・と著者はいう。

そういった観点から、この本は、今日の日本の成り立ちに大きな影響を与えた
12人の歴史上の人物について論じている。

この前編では次の6名である。

聖徳太子・・・神・仏・儒習合思想の発案
光源氏・・・上品な政治家の原型
源頼朝・・・二重権限構造の発明
織田信長・・・否定された日本史の英雄
石田三成・・・日本型プロジェクトの創造
徳川家康・・・成長志向気質の変革


後編

『日本を創った12人(後編)』には、次の6人が紹介されている。

石田梅吉・・・勤労と倹約の庶民哲学
大久保利通・・・官僚制度の創建
渋沢栄一・・・日本的資本主義の創始
マッカーサー・・・日本を理想のアメリカにする試行
池田勇人・・・経済大国の実現
松下幸之助・・・日本式経営と哲学の創出

前編の6人と合わせた12人は、現在の日本の社会構造や日本人らしさに、
重要な影響を与えた歴史上の人物として紹介されている。

これらの人の名前だけは良く知っている人たちであるが、改めてこの本を読んでみて
日本人の日本人らしさが形成されてきた過程が勉強できる本である。

   22.日本人としてこれだけは知っておきたいこと        2007年6月記

中西輝政著

PHP新書

PHP研究所
発行

著者の中西輝政氏は、1947年生まれ60歳の政治・歴史学者、評論家である。

時々、テレビの政治討論会等で見かけることがあり、かねてより、その論調には、説得力があり、
いちいち納得できる論旨の持ち主であると思っていた。

最近になってとみに論議となっている、『歴史問題』『皇室問題』『靖国問題』
『教育問題』等について、意見を述べるとともに、『そもそも日本とは、どんな国なのか』
について、論じられている。

第1章 歪められた自画像
第2章 あの戦争をどう見るべきか
第3章 日本人にとっての天皇
第4章 日本文明とは何か

の章から成っていて、『戦後60年、いまこそ覚醒のとき』と著者は訴える。
左ききのジャーナリストや人々にとっては耳が痛い内容である。

   23.日本共産党                      2007年5月記

筆坂秀世著

新潮新書

新潮社
発行

この本の著者は、元日本共産党政策委員長で、党のナンバー4であった筆坂秀世氏である。
氏は2年前に、不祥事により、参議院議員を辞職し、離党された方である。

かっては、政治討論会などのテレビで、良く見かけた方であり、元共産党の大幹部が、共産党について
どのように語るのか興味をもって読んだものの・・・・・・。

中身は一種の内部告発的な内容であり、共産党内部の絶対的権力体質等が書かれていて、
読んでいて面白いが、

しかし、肝心の日本共産党が目指す、社会主義革命についての明確な道程は解説されていない。