特集 No.8    義母の短歌 (101-120)   (2005年2月3日発行)


 
  枯葉にも くすぶる想いの あるものか 容易く灰に なると限らず



幸せは この位で良し ポケットに 零余子一杯 心が温い



人といて 水に油の 孤独感 ひとり草引く 野に翳おとす



定年を 迎えし弟 乾ける砂 崩るるごとく 病魔に倒る



里人の 大半還暦 すぎている 村の祭りが 滅法明るい



酔うほどに 貴方もこなたも なくなりて 自治会長が 叩かれている



乾燥機 低く唸れり 秋祭り 終わりし里の たゆき静けさ



二度までも 風雨に倒れし コスモスの 咲かねば終れぬ 花の小さし



羽化出来ぬ 蛹のごとき 焦り持ち 雨降り止まぬ 窓見据えいる



手の窪に 乗せて食べよと 差し出だす 紫したたる 茄子の浅漬け



なめらかに 老いは来たらず 逆縁の 柩にさか立つ わがばさら髪



子を生さず 妻と二人の 濃きひと世 終えし弟 幸せなるべし



弟の 意思なき双の 指ほどき 骨もおれよと 一期の握手



旅立ちの 脚絆の紐の 蝶結び ほどけぬように ゆけよ弟



膝の骨 先ず拾いやる 黄泉路ゆく 歩みのせめて 恙なくあれ



物の怪の 漂うごとき 霧分けて 葬りもどりの 橋うつつなく



秋のあわれ さとりし貌の かまぎっちょ 淋しすぎるよ 枯色の羽



植木屋の 好みに刈られし 庭樹木の 新芽は新芽の 想いに伸びる



紅葉に 山ふくらみて ざわめくも 常緑の杉の 豊かさ静けさ



愛しまれぬ ことは承知の 濡れ鴉 贄を咥えて トタン屋根すべる



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