特集 No.8    義母の短歌 (121-140)   (2005年2月3日発行)


 
  まく餌に 鴨も混りて 群るる鯉 飼われいるものの かなしき平和



降るやみと 地より沸くやみ 絡み合い 窓にはりつく ぬばたまの闇



「おふくろの 顔もむずかし なったよな」 子には届かぬ 老境の憂さ



漁終えし 舟が港に 憩うごと スニーカー並ぶ 正月の土間



紫に 山けぶらせて 降る雨に 塩ふる程の 雪の混りつ



人を見ず 昏れしひと日を 絵になせば うす紫の やわらかき靄



ひらがなの 文字ちらすごと 鴉とぶ 寒の日和の 空透きとおる



花ひらく たまゆらに会いし 心地なり つけしテレビの あき子先生
 


「お母ちゃんは じをようかかん さかいでな」 一通きりの 亡き母の文



冬日和 パジャマはしゃぎて 竿ゆらす 何ぞ良きこと ありそうな昼



雪曇り 三日の後の 晴天に 心はずみぬ 逢う人がある



何程の 飢え満たせしや 子連れ猪 みみずを掘りし 大穴いくつ



「此の空は 俺のもんだ」と 満天の 星に手を振る 息子の銀髪



夜の蜘蛛 音も立てずに わが影の 首すじよぎれば 心地良からず



初めより ひとりのごとく 野を守る われに近くて 遠き三人子



適齢期 どこ吹く風と 留学に 婚の資金を はたく女の孫



ニヒリズムの 息子が霊験 あらたかと 届けて呉れし 足のお守り



すっぽりと 眠りに落ちし 数分に 死界のやすらぎ 見たる気がする



破れ蓮の 茎なお墓標の ごとく立て 根は新しき 芽を育ている


脱ぎ捨てし 軍手に芽吹く 草の根の 網目貫く 生きの力よ



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